[資格と許認可]
解体業を営む為には、建設業許可 (建設業法3条) 又は解体工事業登録 (建設リサイクル法21条) が必要です。また実際に作業を行う者、指揮する者にも様々な資格や技能講習が必要です。
解体工事業を営む場合
- 解体工事業の登録は、工事を行う都道府県ごとに登録が必要です。
- 建設業許可は、二つ以上の都道府県に営業所を設けて営業をする場合は
国土交通大臣の許可が、ひとつの都道府県に営業所が限られている場合は
その営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可が必要です。 - いずれの場合も主任技術者や監理技術者などの技術者設置が義務づけられて居ります。
作業員などに必要な資格
[作業主任者を置き直接作業を指揮させなければならない作業と資格名]
- アセチレン(ガス)溶接装置を使う場合 [ガス溶接作業主任者]
- 2m以上の地山の掘削 [地山の掘削作業主任者]
- 高さ5m以上の足場の組立/変更/解体 [足場の組立て等作業主任者]
- 高さ5m以上の鉄骨造建築物の組立/変更/解体 [建築物等の鉄骨の組立作業主任者]
- 高さ5m以上のRC造建物の解体又は破壊 [コンクリート造工作物の解体作業主任者]
- アスベストを取り扱う場合 [特定化学物質等作業主任者]
[作業指揮者を置き直接作業を指揮させなければならない作業]
- 木造建築物解体工事作業指揮者 (参考:木造建築物解体工事作業指揮者安全教育)
- 墜落防止作業指揮者
- 車輌系建設機械修理等作業指揮者
- 貨物自動車の荷の積み卸し作業指揮者
[技能講習を受けた作業者がしなければならない作業と資格名]
- 吊り上げ荷重5t未満の移動式クレーンの操作 [小型移動式クレーン運転技能講習]
- 可燃性ガス及び酸素を用いて行う作業 [ガス溶接技能講習又はガス溶接作業主任者免許]
- 機体重量3t以上の重機の操作 [車輌系建設機械運転技能講習又は建設機械施工技術検定]
- 高さ10m以上の高所作業車の操作 [高所作業者運転技能講習]
- 制限荷重又は吊り上げ荷重1t以上の玉掛け [玉掛け技能講習]
[特別教育を受けた作業者がしなければならない作業]
- 吊り上げ荷重1t未満の移動式クレーンの操作
- 機体重量3t未満の重機の操作
- 高さ10m以下の高所作業車の操作
- 制限荷重又は吊り上げ荷重1t未満の玉掛け
- 研削といしの取替え又は取替時の試運転
- ホイスト等、動力式巻上げ機の操作
[解体工法]
解体工事といえば騒音や振動などの公害が話題になり危険な仕事といったイメージがありましたが、技術革新の進んだ今日では、そうした諸問題を解決する為に新しい工法が開発され、官民あげての取り組みが進んでいます。
我が国における低振動・低騒音工法の水準は世界でも他に類を見ないほど進んでいます。特に油圧式圧砕機、静的破砕剤の開発や防音パネルの使用によって振動・騒音を著しく減殺、規制値以内に押さえ解体工事現場の環境保全を図っています。
まず、一般的な建築物を解体する工法を、ご紹介します。どの工法も工事に先行して仮設養生及び内装等を人力にて撤去し建築物を躯体(裸の状態)にする事は共通です。
◎印は、現在の主流工法とされて居ります △印の工法は、工期長やコスト高な為、特別な場合に採られる工法です。※最初から重機や機械で壊す工法は違法です
木造などで採られる工法
△ 手壊し工法 その名の通り、人力だけで建築物を解体する工法です。新築時と逆の順序で解体します。騒音や振動などは皆無に等しく「建設リサイクル法」による分別解体もほぼ完璧に実行することが出来ますが、工期が長くコスト高な為、道路狭小で重機やダンプが入れないなど特別な場合を除き殆ど行われて居りません。 |
◎ 重機併用(手壊し)工法 先述の手壊し工法に重機を併せた工法です。「建設リサイクル法」で指定された箇所及び重機を敷地内に設置する場所を確保するまでは人力解体し、その後は重機及び人力で解体します。最も一般的な工法です。 |
RC/SRC造などで採られる工法
△ ハンドブレーカー工法 エアコンプレッサーを動力源としハンドブレーカーだけでコンクリート躯体を壊す工法です。重機を搬入出来ない場合や耐震補強工事などのRC建物等の解体で採られる工法です。「(RC建物等の)手壊し」とも呼ばれますので工期が長くコスト高になります。 |
◎ 圧砕機工法 昭和50年代に圧砕機が開発されて以来、従来のスチールボールや大型ブレーカーだけによる工法に代わりRC建築物等を解体する現在の主流です。油圧クラッシャーやショベルなどを可動ベースマシン(通称「ユンボ」)に取り付け、油圧を動力源にして刃を開閉させ、コンクリートを破砕、鉄骨や鉄筋を切断します。 |
△ カッター(ウォールソー)工法 この工法は走行できる加圧機械に特殊なダイアモンドブレードをセットして部位別に切断。切ったコンクリをクレーンで吊り下げ上部階から順次部材別に解体するものです。 |
△ ワイヤーソーイング工法 鉄筋コンクリートの構造物にワイヤーソー(ダイアモンドの切刃をワイヤーに巻付けたもの)を巻き、駆動機でエンドレスに高速回転させて切断するものです。 |
△ アブレィシブウォータージェット工法 超高圧ウォーターに微粒ガーネットを混入、これを研磨剤として直径3mm程のノズルで鉄筋コンクリート面に噴出させ切断・解体する工法です。 |
△ 静的破砕剤工法 コンクリ等の破砕に際し、圧砕機では刃の開口幅が狭い時や油圧ブレーカーを用いると振動・騒音が激しい場合、静的破砕剤を使用(併用)する工法が採られます。これはコンクリに穴をあけ、静的破砕剤をその穴に充填すると徐々に膨張し12〜24時間後に300kg/cm2以上となって強い破砕力を発揮し、鉄筋コンクリートにクラックが入り解体する工法です。 |
△ ミニブラスティング工法 ビル等の解体に特殊火薬を使用し瞬時に崩壊させるアメリカの工法がTVで紹介されたことがありますが、そのアメリカでも火薬使用に伴う振動・騒音・飛石・粉塵等の公害が激しく保安上にも問題があるため実際の使用例は解体工事全体の6%程度に過ぎないと言われます。しかし環境への被害を最小限にして構造物の小部分を逐次破砕していく工法は可能で現にデンマーク、スウェーデン、ドイツなどで実用化されています。この工法は1穴当たりの火薬使用を10〜30gにとどめ、壁・スラブ(床)等に30〜80cmの間隔で穴をあけ火薬充填、段発電気雷管を使用して連続的に爆発させるものです。これは従来の手斫りに比べると所用時間も短く、作業員は1/3程度で施工できます。残念ながら現在、我が国では諸問題によりこの工法は実用化されていませんが十分な研究の上、実用化に取組んでいます。 |
△ 直接通電加熱工法 鉄筋コンクリート構造物の鉄筋に低電圧・大電流の電気を流して鉄筋を加熱しコンクリートにクラックを発生させて解体を容易にする工法です。 |
特殊構造物の解体に威力を発揮している新工法
一般の建築物の解体には殆ど採用されていませんが水中構築物、原子力発電所の炉、セラミックス部材などの 特殊構造物の解体に威力を発揮している新工法の一部を紹介いたします。
△ 火炎ジェット工法 超高速で高温のジェット火炎を噴射し、その高温・高エネルギーでコンクリートなどを溶断する工法です。 |
△ レーザー工法 レーザー発振機から発振されたレーザービームを複数のミラーによって切断箇所に導き、集光ミラーまたは集光レンズでビームを絞り、それをコンクリートに当てて溶解・切断する工法です。 |
△ マイクロウェーブ工法 コンクリート構造物にマイクロ波を照射し電子レンジと同様にマイクロ波の内部加熱の性質を利用してコンクリートを破砕する工法です。 |
工事の流れ
木造建築物を例にとって解体作業のながれを以下にご紹介いたします。鉄骨造やRC(鉄筋コンクリート)造も基本的に同じ工程で作業します。まず工事に先立ち、各種届出、許認可を、しなければなりません。
発注者等が行う各種届出
項目 | 摘要 | 届出先 | 届出時期 | 備考 | 法令 |
建物 | 建物滅失登記 | 法務局 | 1ヶ月以内 | 不登法93 | |
家屋取り壊し届け | 市区町村 | 地税法382 | |||
官民協会境界確定願 | 財務局 | 2〜3ヶ月前 | 国財法31 | ||
建設リサイクル法関連 | 解体建物の構造 | 都道府県 | 着工7日前 | 委任状を以て業者に依頼可能 | 建設リサイクル法 |
着手時期及び工期、工程表 | |||||
分別解体の計画 | |||||
廃材量の見込み | |||||
上段4項目の変更届 | |||||
各種廃止届 | 低圧電灯電力撤去申込 | 電力会社 | 廃止7日前 | ||
自家用電気廃止申込 | 廃止30日前 | ||||
電話機撤去申込 | NTT | 廃止7日前 | |||
水道使用中止届 | 水道局 | 廃止7日前 | 給水条例 | ||
ガス装置撤去申込 | ガス会社 | 廃止7日前 | |||
危険物貯蔵所廃止届 | 消防署 | 遅滞なく | 消防法12 | ||
消防指定水利廃止届 | 着工前 | 消防法21 | |||
ボイラー廃止報告書 | 監督署 | 遅滞なく | ボイラ則48 | ||
昇降機廃止届 | 都道府県 | 廃止時 | 建基法12 | ||
PCB | 使用機器廃止並びに保管管理報告書 | 通産局 | 速やかに | 通産省通達 | |
使用機器保有状況変更届 | 電気絶縁物処理協会 | 遅滞なく | |||
その他 | 埋蔵文化財区域内の届 | 文化庁 | 着工30日前 | 文保法57 |
元請業者が行う各種届出
項目 | 摘要 | 届出先 | 届出時期 | 備考 | 法令 |
建物 | 建築物除却届 | 市区町村 | 解体前 | 建基法15 | |
仮設物 | 工事用仮設建物概要報告書 | 着工前 | 建基法85 | ||
道路 | 道路占用許可申請 | 道路管理者 | 10〜14日前 | 足場、仮囲い等 | 道路法32 |
道路自費工事許可申請 | 24〜40日前 | ガードレール一時撤去等 | 道路法24 | ||
特殊車両通行許可申請 | 20〜30日前 | 自重20t超、牽引27t超 | 道路法47の2 | ||
沿道掘削申請 | 20〜50日前 | 道路法44 | |||
道路使用許可申請 | 警察署 | 2〜7日前 | 道交法77 | ||
通行停止道路通行許可申請 | 約2日前 | 道交法8 | |||
環境 | 特定建設作業実施届 | 市区町村 | 開始8日前 | 各令別表2に定める特定建設作業 | 騒(振)規法14 |
特定施設設置届 | 開始30日前 | 騒規法6 | |||
消防 | 危険物貯蔵取扱許可申請 | 消防署 | 15日前 | ガソリン100L以上、灯油500L以上 | 消防法10 |
圧縮アセチレンガス等の貯蔵取扱届 | 2〜3日前 | アセチレン40kgf以上 | 消防法8の2 | ||
工事中の消防計画届 | 遅滞なく | 共用建物の解体 | 消防法8 | ||
電気 | 臨時電力電灯申込書 | 電力会社 | 30日前 | 使用電力50kw未満の時 | 電事法70〜74 |
自家用電気使用申込 | 40日前 | 使用電力50kw以上の時 | |||
上下水道 | 給水装置新設工事申込書 | 水道局 | 15〜30日前 | 給水条例 | |
敷地内旧水道撤去願 | 7〜10日前 | ||||
下水道一時使用報告書 | 約7日前 | ||||
安全衛生 | 特定元方事業開始報告書 | 監督署 | 7日前 | 安則644 | |
建設工事計画届 | 14日前 | 高さ31m超の建物(解体)、深さ10m以上の掘削 | 安衛法88 | ||
事故報告書 | 遅滞なく | 安則96 | |||
建設機械設置移転届 | 30日前 | 吊足場、張出足場で高さ10m以上の足場を60日以上設置するとき | 安衛法88 | ||
石綿 | アスベスト使用建築物に係る事前調査報告書 | 市区町村 | 着工前 | 条例 | |
アスベスト除去工事計画書 | 監督署 | 14日前 | 安衛88安則90 | ||
特定粉塵排出作業実施届 | 都道府県 | 14日前 | 大汚法18 | ||
アスベスト使用建築物に係る解体撤去工事完了報告書 | 市区町村 | 完了後 | 条例 |
解体工事や産廃処分のフロー